近年、企業における生成AIの活用が増え、関心を持つ企業も急増しています。しかし、多くの企業はまだその活用方法において暗中模索の状態にあります。そんな中でRAG(Retrieval-Augmented Generation)が導入されるケースが増えています。その理由は、RAGは現状の技術でシンプルに実現可能である。また、効果が直結的に現れやすい点にあります。

例えば、カスタマーサポートの効率化や社内ナレッジの活用などです。このような、すぐに効果が見えやすい分野で適用可能です。また、企業の意思決定者にとってROI(投資対効果)の明確な見込みを出しやすいのは重要な要素です。RAGは短期間で効果を示しやすい。そして、初期投資を抑えつつ効果を出しやすい。こういった点が段階的にAI導入を進めたい企業にとって魅力的に映るのが現状です。

しかしながら、RAG導入がゴールとなり結局は使われないというケースも散見されます。そこで、まずは費用を抑えつつ生成AIを「始める文化」を醸成しやすいサービスをいくつか挙げていきます。

あわせて読みたい注目記事

はじめに

生成AI系のサービスは日々さまざまな新しいサービスが発表されています。特に会話型AIでは最近OpenAIがGPT-4oを活用した技術を発表しました。今後も各企業がこの技術に対応していくことが予想されます。

しかし他社との差別化を図るためには例えば、子供向け、大人向け、特定の語学学習、年代に合わせた雑談、個別向けのパーソナライズ化など、特定の属性に焦点を当てた展開が必要となってきます。これらは一例に過ぎませんが、小規模なニーズに対しても可能性が広がっています。

ただし、現時点ではどのようなサービスが登場するか予測しにくい状況にあります。とはいえ、今スピード感をもって展開することができれば話題を広げれる可能性はあります。
ただし、それを除いても自身の業務を効率化させるのは各社共通です。自社内での活用がうまくいっていない状態で他社にサービスを提供しようとしても、成功は難しい可能性が高いです。まずは自社内で生成AIをどのように活用するか。その「土壌」を構築することが重要だと考えます。

1.ChatGPT Teamプラン、Claude Teamを使う。

これがあれば法人向けの生成AIのニーズにも十分対応できると思われます。
生成AIの進化で指示が多少抽象的でもAI側が組み取ってくれるようになりました。
また、プロンプトを自動で生成してくれる機能も登場しています。そのため、プロンプトをどうするというような内容もある程度、縮小、陳腐化していくでしょう。

先ほどの、人間が曖昧に依頼した内容を正確にプロンプト化し、生成AIに投げるAIですが現時点でも可能です。ただより高度な変換が期待されます。このようなAIが登場すれば、曖昧な依頼をプロンプトに変換。そして、生成AIに渡すことが簡単に行えるようになるでしょう。
実際そのあとのチェックも行う「AIエージェント」なる概念も登場してきています。

また、ちょっとしたUI機能が欲しい場合でも、生成AIを使えば作成が可能です。例えばプロンプトを保持したいだけであれば「ブラウザ拡張機能」を利用することで実現できます。もうすでに存在していますが、その拡張機能自体も生成AIで作成することが可能です。

内容がそれましたがLLM各社のチームプランの料金に関しても1アカウント数千円程度です。福利厚生費と比べても決して高くはありません。さらに、シャドーIT的に生成AIを使っている従業員も多くいると考えられます。そのため、利用を禁止するのではなく、企業側から選択肢を設けることでシャドーITの抑止にもつながる可能性もあります。

さらに、チームプランに関しては、データが学習の対象外となる点も重要です。この点で、APIと同等のセキュリティを提供します。企業は安心してチームプランを利用することができます。

料金について(ChatGPTの場合)

ChatGPTteam-RAG
ChatGPTteam-RAG

年単位で請求が行われます。最低 2 ユーザーとのことです。そのため600ドル(150円計算で約9万円)簡易的な要件は満たされると思います。

料金について(Claudeの場合)

ClaudeteamRAG
ClaudeteamRAG

ちなみにClaudeの場合は30ドルで最低5人。料金は月額換算はGPTより高いです。ただ、月額からなのでとりあえず試すならこちらの方がやすくはあります。

Claude は以下の学習状況については以下のポリシーを掲げています。(2024年7月8日現在)

弊社は、以下の場合を除き、あなたの入力や出力をモデルのトレーニングに使用しません。(1) あなたの会話が信頼と安全のレビューのためにフラグ付けされている場合(この場合、弊社の使用許諾ポリシーを検出および執行する能力を向上させるために、それらを使用または分析することがあります。これには、弊社の信頼と安全チームの使用のためのモデルのトレーニングが含まれます。これはAnthropicの安全ミッションと一致しています)、(2) あなたが明示的にその資料を報告している場合(例えば、フィードバックメカニズムを通じて)、(3) その他の方法で明示的にオプトインしている場合。

私はプロンプトと結果をモデルのトレーニングに使用されることをオプトアウトしたいです。

さらに先日、Claudeも「Projects」を追加しました。その結果、GPTsとほぼ同等の機能が提供されるようになりました。この機能を利用すれば、必要な書類を格納しておくだけでそれに基づいた専用の回答を得ることができます。まさに業務RAGです。

2.DifyCozemiiboといったサービスを利用してRAGをつくる。

Dify、Coze、miiboといったサービスは、GUI(クリック)で操作できるため、簡単な資料を読み込ませて回答させる程度の簡単なRAG(Retrieval-Augmented Generation)を短時間で実現することが可能です。しかも、数時間以内、いや数十分以内に設定を完了することもできます。

さらに、より細かい設定が必要な場合は、Difyは詳細なカスタマイズが可能です。Difyはローカル環境やAWSMicrosoft Azureなどのクラウド環境へのデプロイも対応しています。拡張性が非常に高いです。ただし、Difyではコードを使用する場面も出てくるため、技術的な知識が必要になります。そのため、非エンジニア向けにはmiiboなどのサービスが適しています。

miiboは日本企業が提供しているため、国内ユーザーにとっては使いやすい点も魅力です。また、チャット部分(フロントエンド)は他の外部サービスと連携が可能です。例えば、Slackに生成AIを組み込んだような使用感を味わうことができます。その他の主要なチャットツールにも対応しているため、幅広い利用シーンに対応できます。料金も無料分が存在します。

miibo-slack-RAG

3.Make(旧: Integromat)Zapierを使う。

Make(旧: Integromat)やZapierは、一言で言うなら「業務プロセスの自動化ツール」です。これらのツールは、例えば、Gmailなどのさまざまなサービスを連携させ、自動ワークフローを作成するためのものです。これらのツールは昔から存在し、多くの企業で利用されています。

生成AIの登場により、これらの自動化ツールはさらに強力になりました。各種LLM(大規模言語モデル)との接続が可能になったことで、例えばZoomの会議が終わったら、すぐにChatGPTに送信して文字起こしを行う。そして要約し、それをチャットツールに送る。といったプロセスを指示なしで一括で行うことができます。

こうした会議の要約ツールはすでにSaaS化されています。ただ、MakeやZapierを使えば無料から使えるツールで同様の機能を実現することができます。自分で作成するため、オリジナル性を持たせることが可能です。また、既製品を使うのか。それともPoC(概念実証)に利用し本格的に利用するかを選択することも可能です。

ただし、これらのツールの難点は主に英語で提供されていることです。ブラウザの翻訳機能を駆使して利用する必要があります。ただ、操作自体は直感的なので、比較的簡単に操作することができます。

自社でオリジナルRAGを作る。

自社でオリジナルの生成AIシステムを作成する場合、ベクトルRAGであれば数十万程度のコストで作れる場合もあります。しかし、新しいLLM(大規模言語モデル)が登場した際の対応。会話履歴の管理。回答精度の向上など。多くの要件を詰める必要があります。

通常のChatGPTなどは、会話履歴を自動的に覚えてくれます。ただ、APIを利用したオリジナルシステムでは、その点も考慮しなければなりません。単発の会話だけで済むケースは多くありません。また、継続的な対話が必要となるケースでは会話履歴を管理する仕組みが不可欠です。

また、ナレッジ機能についても状況によっては今後OpenAIやAnthropic、Google、Microsoftなどの企業が新たな機能を追加する可能性もあります。そうした場合、時間をかけ構築したものが一瞬で飲み込まれる可能性があります。

そのため、自社でオリジナルシステムを作り上げる際には、付加価値を提供することが重要です。例えば、特定の業種や属性に特化するといった感じです。
もちろん一般のツールではある程度のことまでしかできない。もしくは作り上げることはできないかもしれません。そのため、オリジナルの内容を搭載することで特徴を出すことはできますが、逆に言えば最初の一歩としては知見がない中だとそのオリジナルを出すことが厳しい可能性が高いです。
まずは低額なツールなどから試し、そこで得た知見にし「踏み台」にしてからオリジナルなものを作り上げるのが効率的かもしれません。

こうした点を考慮して、オリジナルシステムを作り上げることが求められます。

まとめ

上記のようなサービスを挙げてみました。ただし、これは一例です。日に日に多くのサービスや技術が増えています。もし安価でサービスとして提供されているのであれば保守性の観点からそちらを利用したほうが合理的な可能性があります。

今、そのシステムを自社で作ることに本当に意味があるのか。そして、そのシステムには付加価値が存在するのか。また、その付加価値自体が、生成AIを主に提供しているGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)などが将来的に提供してくる可能性はないのか。これらの点を見据えた対応が必要です。

仮にGAFAMが同様の機能を提供してきたとしても、特定の業種やニッチな市場に特化した付加価値があり、その需要が継続する可能性が高いのであれば、それは専門性に富んだ有用なシステムと言えます。

以上を踏まえて、自社のニーズに合ったシステムを構築するか、既存のサービスを利用するかを慎重に検討することが重要です。

この記事を書いた人

スムーズロゴ
SMOOZ
enterprise-smooz

資料
ダウンロード

マスタデータのメンテナンスに関わる機能をまとめたSaaS「SMOOZ
SMOOZはリレーショナルデータベースの課題を解決するサービスです。
オンラインデモで気軽に試すことが可能です。